2021AW Styling sample「Brithish Influence Suit-④」~英国の影響力~|銀座店
ホームページでもご案内させていただいておりますが、京都ビスポークでは大きく分けて「イタリアンクラシコモデル」と「サヴィルローモデル」の2モデルをご用意いたしております。現状、ご来店頂く顧客様からは英国スーツに対する支持は熱烈なのですが、受注の口数の実情は「イタリアンクラシコモデル」が大半を占めています。このモデルは1990年代後半以降にイタリアのサルトリア界で盛り上がった、英国にリスペクトした注文服のムーブメント(俗称)「クラシコイタリア」のスーツ造りを京都ビスポークが独自に解釈したハウスモデルなのです。
それまで(1980年代)のイタリアでのドレスクロージングというとG・アルマーニやヴェルサーチに象徴される既製品のリラックス&ソフトコンストラクションのセットアップがイメージされますが、それは一部のラグジュアリーなファッションフリーク層における現象であり、それ以外の一般のメンズウェア実需層の実情は「ハケット」「バブァー」「ジョージ・クレヴァリー」「ラルフローレン(!)」など英国ブランドが人気だった事を意外と知られてない。イタリア人が英国モノに対して持っている憧れや尊敬は日本人のイメージよりも意外と高いところにあり、その状況は現在でも同様でそんな日本も似たようなものです。今は本格開催されていませんがピッティの会場等へ出向くとそんな状況は簡単に理解できますね。
当時、そんな流れの中「ルビナッチ」「アットリーニ」「カラチェニ」「マトッツォ」らクラシコイタリア協会に属した注文服の職人たちはマニカカミーチャ、バルカポケット、ステッチング、袖釦重ね付け、カッタウェイカラー等、英国に傾倒しながら敢えて抗うようなビスポークディテールを次々と生み出した。また、ドレスクロージングにおけるボディフィッティングはそれまでのリラックスバランスを否定し、古典的なサヴィルローフィッティングとも一線を画す伝統的なサルトリアフィッティングを各々の顧客に提供した。肝心の縫製は本場英国が忘れかけてた職人技を尊重する縫製定義を復活させながらトレンドを取り戻し、注文服業界における1980年台の閉塞感を打開していった。そんな一連のムーブメントが「クラシコイタリア」という俗称で世界的に人気となり、その流れは微妙に変化しながら現在でも主流であり続けています。
今シーズンより銀座店では、顧客の皆様に店舗でご覧いただくスタイリングサンプルを今まで以上にテーマ性を持って作成するように取組んでいます。それは私共の提案が偏ったりエゴなものになる事を回避することと、顧客様の琴線に触れる現実的で有用な注文服を具体的にご案内したいという目的があるからなのです。勿論、色気のない最大公約数的な無難なモノを提案しないよう注意しつつ、京都ビスポークらしいものを探求しながらご提案いたします。
特に今シーズンは「Brithish Influence Suit」と呈し、英国に影響をうけたビスポークスーツをシルエット・ディテール・テキスタイルの面でご紹介しております。それは、英国そのものを表現したものや、フレーバーとして英国を取り入れたものまで多様に展開する予定です。
今回紹介するのはそんな“ザ・クラシコイタリア”という風な設定の基、作成したスタイリングサンプルです。
服地は「ラグジュアリー。ときに機能的。」そんなキャプションがぴったりくるE.ゼニアのエレクタ。トラヴェラーと並びビジネス用としてはとても使いやすいシリーズです。また当店の職人との相性も良く、最高の仕立て映えを見せてくれます。多くの方が周知されているようにE.ゼニアは服地業界におけるヒエラルキーの頂点に君臨する服地メーカーです。同ブランドにイメージされる高級服地としてのプライドを確保しつつ、スーツとしての機能性をリアリティ高く極めた品質が特徴です。
その中で今回のサンプルに使用した#49-7093という服地はクラシックなオルタネートストライプを見事にゼニアの解釈によって服地設計されている。
なんとエレガントな柄な事か!正直、万人受けするものとは思えないこの服に袖を通すにはある種の資格がいるような雰囲気さえあります。E.ゼニアというブランドはそんなところにエグゼグティブのチャレンジ精神が掻き立てられるのかもしれませんね。
デザインは普遍的な英国的ヴェステッドスーツ。スーツジャケットはシングルブレステッド・ピークドラペル・2釦サイドベンツという構成。ジャケットはハイウエストでの絞り込みとややワイドラペルにした点が英国的雰囲気を醸し出しています。腰周りのハッキングポケットは傾斜角は少なくベント位置も低く、この辺りはUnder-statement(=控え目で馴染むこと)を英国的服装ポリシーに準じて“さりげない感”にしています。袖口は英国に対するアンチの表れとしての重ね釦と本開き切羽。ショルダーラインはロープドではなくポピュラーなナチュラルショルダーと設定しており、この辺は高圧的で厳ついのを好まないイタリアンスーツの気質を優先。またスーツジャケットは京都ビスポークの標準である総毛芯仕立てによって一着一着仕立てており、首・肩から豊かな膨らみを描く胸周りは職人の絶妙なアイロンワークによって形成され、そこから流れてくるラペルのやさしいロールは京都ビスポークの仕立ての肝となっています。
CLASSIC FABRIC FAIR Ⅱ
~Ermenegildo Zegna Weeks~
2021-9/16㈭~9/30㈭
※火曜日は定休
京都ビスポーク全店にて開催
今秋冬は京都ビスポーク創業以来最大級の買付けとなり同時に最大級の展開となっております。
そんな私共の勝手な想いですが、お客様と想いをご共有いただける事がこの上ない幸せだと思って
おります。
是非ご来店くださいませ。
銀座店 古賀