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”初めてのオーダースーツの想い出”|銀座店

2020-12-25|

   

とうとう来年還暦を迎える。思い返せば今までに着た洋服それぞれに想い出がある。七五三の祝い

服、制服、、、。60歳になるというのに案外とその時のことを思い出す。その中でも最初のオーダ

ースーツにはちょっと特別な酸っぱい想い出がある。

お恥ずかしながら10代後半は少しアナーキーな時を過ごし、成人式には行かず革ジャンを着てオー

トバイに乗っていた。大学2年になる前に両親から卒業もするだろう(して欲しい)ということで成人

式・入社式を兼ねたオーダースーツを地元の百貨店で誂えさせられた。先日、母の遺品を整理して

いたら引き出しの奥にその時の受注控えが保管されていた。

       

服地はダブルクロス織で色柄は紺地に青白のオルタネートストライプを自分で選んだこともあり殊

更に気に入り、会社訪問もそれで全部こなした。当時はそれで通用したものです。当然のことなが

らそのスーツは現存しないが私の記憶に明瞭に刻まれている。またその事でまともに両親に礼を言

ったこともなく、両親と写真でも撮っておけば違う味の想い出になったはずだ。

 

服というモノは、式服、仕事服であれ購入時点では単なる“必要品”です。しかし、着用する本人様

だけでなく周りのヒトへの想いや配慮があり、その想いが互いに交錯することで意外な価値を生む

“思い出のお品”にもなります。ある意味、それがビスポーク(注文服)をする本質かもしれません。

式服の服地選びやデザイン等で意見が合わず難航するカップルや家族連れのお客様。

社内外の関係や環境の中で自分好みのお洒落なスーツ作りに悩まれ何度も来店されるお客様。

店舗に来店頂くお客様は一着のスーツに様々な想いを抱えてご注文いただいております。それを

受けて店舗の私共は工房及び服地問屋を含め全力で御洋服をお仕立て致します。

そこで想いが籠った洋服が仕立てられたら、是非ご家族と近くの写真館に行ってみられてはいかが

でしょうか。きっとお客様にとって一生の想い出になるはずです。

考え直せば両親に買って貰ったオーダースーツがあったからこそ、大学卒業以来この仕事を続けて

られているんだろうと苦笑する今日この頃です。

 

銀座店 古賀一範